この記事は、伝説的酷評映画としてネット界隈を中心に映画ファンの中でも有名になってしまった映画『デビルマン』を深掘りしながら徹底的に解説していくものです。
製作費が当時(2004年)の邦画としては破格の10億円の製作費を掛けて作られたにもかかわらず、興行収入が約5.2億円という大コケをかましました。
主演級俳優さんのセリフ棒読みやチープなロケーションなどダメな評価が目立つ作品となりました。その一方、アニメとCGを融合させた新しい試みをした意欲作としてなど評価できるところもあります。
史上最強のクソ映画という烙印を押された、実写映画『デビルマン』が少しでも気になる方は最後まで読んでください。
1.漫画『デビルマン』について
1-1.原作漫画の概要
デビルマンは、1972年から1973年に連載された永井豪さんの代表作です。原作コミック全5巻は、世界累計発行部数が5000万部を突破している誰もがその名を知る漫画となっています。
この作品は、永井豪さんが当時連載していた『魔王ダンテ』が基になっている作品です。『魔王ダンテ』のような作品をアニメ化したいというところから、漫画とアニメが同時進行で制作されました。
漫画版とアニメ版はそれぞれのオリジナル要素があり、ある意味別の作品となっています。
漫画版は衝撃的なほどのストーリーと残酷描写を持つ作品なので、未読の方は心して読んでほしいです。
漫画の内容をざっくり言うと、心優しいる主人公・不動明が人間を滅ぼそうとしている「デーモン(悪魔)」と戦うために、自らデーモンの力を取り入れデーモンと戦う物語。
終盤では黙示録的な世界の終末が、現代社会の問題を汲んだ内容となっており、その後の色んな作品に絶大なる影響を与えている。
漫画『デビルマン』は、ダークヒーローの原点として、今でも数多くのファンを有するカリスマ的人気の作品です。
1-2.実写映画は原作漫画のどの部分が描かれたのか
原作の話を大筋網羅しようとエピソードを羅列されています。そのために重要なところがカットされ、原作未読者には理解できないストーリー進行となっています。
その中でも極めつけは、『妖鳥シレーヌ』(冨永愛)が登場するシーン。戦いの最中に突然いなくなり、何もなかったようにその後姿を現さないホラーな展開は、映画を見る人を置き去りにしました。
シレーヌの衣装は、冨永愛さんの要望で当初予定されたものから変更され、原作から乖離したものになりました。これにより永井豪作品特有のエロス要素が完全になくなってしまいました。
全体的には漫画原作を意識した内容となっていますが、重要なシーンの改変部分が多々あり、原作ファンからは不満の声が多かったようです。
2.実写映画『デビルマン』について
上映日 | 2004年10月09日 |
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上映時間 | 116分 |
制作会社 | 東映東京撮影所 |
配給 | 東映 |
2-1.ストーリー概要
両親をなくした高校生・不動明が、親友・了の父の死をきっかけに「デーモン (悪魔)」と合体してしまう。強い意志を持って人の心を残したが、半人半魔の「デビルマン」となる。次第に事態は深刻化し、人類滅亡計画に巻き込まれていく。
皮肉なことに、この予告に作品の全て(良い所)が注がれています。これを見るかぎり面白そうな映画なんですよね。
2-2.スタッフ情報
原作 | 永井豪『デビルマン』 |
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監督 | 那須博之 |
脚本 | 那須真知子 |
主題歌 | 「光の中で」hiro |
2-3.キャスト情報
役名 | 俳優 |
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不動明/デビルマン | 伊崎央登 |
飛鳥了 / サタン | 伊崎右典 |
牧村美樹 | 酒井彩名 |
牧村啓介 | 宇崎竜童 |
牧村恵美 | 阿木燿子 |
飛鳥教授 | 本田博太郎 |
シレーヌ | 冨永愛 |
川本巳依子(ミーコ) | 渋谷飛鳥 |
ススム | 染谷将太 |
ニュースキャスター/モリソン | ボブ・サップ |
牛久雅夫 | 仁科克基 |
重森隆夫 | 大沢樹生 |
上田 | きたろう |
佃 | 鳥肌実 |
アジトのデーモン | KONISHIKI |
隣家の中年女 | 小林幸子 |
銃を受け取る車椅子の男 | 的場浩司 |
神父 | 永井豪 |
映画『デビルマン』のキャストについての評判は、主演の伊崎兄弟をはじめとしたメインキャストの演技経験からの未熟さが目立つものとなりました。
この映画の特徴として大量のカメオ出演がある。あまりの多さに作品の品質にも影響するほどで、原作者の永井豪さんも出演しています。
3.評価や感想
3-1.興行収入
映画『デビルマン』の興行収入は約5.2億円となっており、製作費が10億円と言われているので赤字だった可能性があります。当時の技術から見るとCGにかなり費用を掛けたと思われます。
3-2.見どころや魅力
映画『デビルマン』は、特撮ものを手掛ける東映とアニメを手掛ける東映アニメーションがタッグを組んで「実写×アニメ×CG」を融合して、新たな映像づくりにチャレンジした作品です。それまでにあったCGとは違う魅力ある映像表現を実現しています。
個人的に一番良かったのは、デビルマン(完全体)の造形がです。かなり素晴らしかったです。
しかし本編では「半分デビルマン状態」が多い・・・。完全体とのギャップがありすぎ。
あまり評価している人はいませんが個人的には、セリフやストーリー進行はそこまで悪いとは思えないです。主演級たちの演技力や声質が違ったら、違う評価がされていたはずです。
3-3.原作者の永井豪さんの関わっているのか?
ハリウッドからの映画化を断った永井豪さんが認めた映画ということで、公開当時はかなり期待されたました。
映画には永井豪さん本人も神父役で出演しています。
この神父のおじいさんは、原作者である永井豪その人です。 #実デビTIPS pic.twitter.com/4JU3QSRTmU
— グレイト斎藤 (@hachidaioh) June 7, 2019
4.実写映画『デビルマン』はどうして酷評されたのかを考察
4-1.メインとなるキャストの演技力
一番多い意見として、メインとなるキャストの演技力に多くの悪評が挙げられています。あまりにも棒読みすぎる演技と声に驚いたとの声も多くありました。
主演の伊崎兄弟ふたりの棒読みセリフをはじめとする演技は、まるで「中学生日記」を見ているようだと酷評の嵐となりました。ストーリー説明を語るようなセリフが多いのも影響しているようです。
4-2.ストーリー展開が窮屈になっている
原作にある程度沿っているのが、余計に物語をよく分からないものにしている。改変するならするで内容を絞ったほうが良かった。あからさまな編集カットが多いなどストーリー進行にも不満の声が多いようです。
重要な「シレーヌ」登場のシーンが、突如終わるという映画史に残る衝撃を残した。この場面には誰もが不可解な思いをするでしょう。
4-3.カメオ出演があまりに多すぎた
緊張感がないカメオ出演の嵐!デーモンの恐怖を多く表現しなければならない作品に対して、あまりにもカメオ出演を多用しすぎていた。
カメオ出演の小林幸子、KONISHIKI、ボブ・サップの方が演技力が高く、映画『デビルマン』の内容が頭に入ってこないなどの意見もあります。
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プロモーションが秀逸で映画本編を100倍面白そうにしていたのが、期待値を上げてしまったようです。結果ポスターが1番よく出来ている。予告PVに良い所がすべて詰め込まれている。
2004年に公開された映画ですが、酷評過ぎて伝説となっています。今でもネットなどでネタとして扱われる始末。ある意味愛される作品とも言えますね。
5.まとめ
5-1.実写映画『デビルマン』に続編はあるのか
今回紹介した映画『デビルマン』はきちんと完結している作品なので、続編となる映画が製作されることはまず無いでしょう。しかも赤字を生み出してしまった映画の続編にお金をだすスポンサーは皆無でしょうね。
2025年春には、永井豪さん原作の「ゲッターロボ」の実写映画が公開されます。実写版『ゲッターロボ』が好評であれば、近い将来新たな実写映画『デビルマン』がつくられる可能性は十分あります。
5-2.実写映画『デビルマン』についてのまとめ
実写映画『デビルマン』は、ネットを中心に酷評が多すぎて伝説化した映画です。その中身は、主演役者たちの演技力やストーリー改変に不満の声が多いです。
一方、アニメーション技術を使ったCGは他の作品にはない魅力があり、一瞬「おっ!」となるはずです。一瞬かもですが・・・。
製作費は公開当時(2004年)では破格の10億円(推定)でした。映画を観るかぎりほとんどがCG製作費に当たられたと推測します。興行収入は約5.2億円だったので、完全に赤字だった可能性があります。
人気漫画原作の映画は大作になりがちで、製作費も膨らみスポンサー至上映画になってしまいます。この辺りがキャスティングに影響したのかなと感じます。
近年映画界を席巻しているNetflixやアマゾンプライムなどで実写化されれば、スポンサー至上主義にならずに、原作ファンも納得の作品ができるかもしれませんね。